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INTERVIEWインタビュー

農業経営で考えるべきこと

2021.08.25

農家(曽我出荷組合 組合長) |

松田 勝美

取材日:2021.03.18

Photo:牧 寛之

ニセコ町の北側に位置するスキー場も近い曽我エリア。ここでジャガイモやブロッコリーを中心に農業を行っている松田勝美さん。ニセコ生まれ、ニセコ育ちの松田さんの家系はおじいさんの代から農家が続けられている。このエリアはニセコの中でも土が肥沃で、採れるジャガイモの品質もとても良い。手塩にかけて育てた農産物に松田さんはとてもこだわりと自信を持っている。

自分たちで作ったジャガイモは自分たちで出荷したい

松田さんは曽我エリアの8組の農家さんと「曽我出荷組合」という組合をつくって直接札幌の市場にジャガイモの出荷を行っている。

一般的には、ポテトハーベスターで土に植っているジャガイモを一気に収穫していくが、松田さんたちはそこに一手間かける。一度土から掘り起こし、表面を乾燥させてから収穫する。そして最後はジャガイモの表面に磨きをかけるのだという。そうすることで非常に綺麗なジャガイモになる。

このように仲間内でこだわりを持って育て、収穫したジャガイモを自分たちの手で市場に出すことで、農作物のブランディングを行っている。そして、市場や消費者から何か要望が出た時に、その要望を今後の農業に生かすこともできる。

出荷組合は松田さんのお父さんが立ち上げ、現在は松田さんが組合長として市場とのやり取りを行っている。9月から3月までの出荷量の調整を行い、市場に安定してジャガイモの供給を行える体制を整える。そうすることで市場との信頼関係も築くことができ、安定して良い条件で買ってもらえるようになる。

自分たちで出荷するには、市場以外にも独自のダンボールの作成・発注や運送業者との調整など、もちろん手間がかかる。しかし、自分たちのジャガイモを、自信を持って美味しく消費者に届けたいという想いが松田さんにはある。

農作物の付加価値について

自分たちがつくる農作物にどのように付加価値をつけるかは農家によって様々だ。オーガニックや無農薬もその一つだが、大きなハードルもあることと制約も多い。消費者が求めるクオリティのものを、消費者が求める価格で安定的に供給できることも付加価値の一つだし、様々な品種・品目の栽培という多様性の提供も付加価値の一つだ。

近年の消費者の健康志向に伴って、ニセコでは良い値が付くブロッコリーの生産がここ数年盛んだという。ブロッコリーに含まれるスルフォラファンという成分が、体の解毒力や抗酸化力を高めるといわれ注目を集めている。松田さんの畑でもブロッコリーを増やしている。本州よりも寒冷な北海道の地はブロッコリー栽培に向いている。ブロッコリーはジャガイモなどに比べて、収穫や運搬のための通路が必要な分、栽培に場所をとる。しかし、比較的軽いので女性でも運搬がしやすく、手で簡単に収穫できるなど作業が効率的に進められる。まだきちっとした収穫機ができていないから、小さな農家でも収益につながりやすいと松田さんは言う。

農業も経営が重要

ジャガイモやブロッコリー以外にも、豆類やかぼちゃ、にんじん、玉ねぎなど様々な作物を栽培している松田さん。消費者のニーズの変化や社会の動向などを踏まえて、作付け品目のバランスや品種を毎年変えている。最近ではニセコであまり見かけない変わった野菜にも注目して勉強しているという。直売所では多様な品種があることが付加価値につながる。松田さんは家の近くの高橋牧場の直売所に野菜を出している。そこでの売れ行きが一つのニーズ調査の場にもなっている。

ニセコの青年部で夏だけ期間限定でやっていた直売所で商品が売れてしまったと連絡が入ったので、それを持っていくとお客さんが待っていてくれたことがあるという。自分の育てた農産物を待ってまで喜んで買ってくれる消費者の方を目にするのはとても嬉しいと松田さんは語る。直売イベントや観光客との交流ができることに松田さんは喜びを感じる。

どんなものを、どのタイミングで消費者は欲しいのかを考え、作付けを計画する。そして、ダンボールの向こう側にいる消費者の笑顔を思い浮かべながら、採れたジャガイモを松田さんは黙々と磨いている。その消費者の喜びが農業のモチベーションになり、さらに良い農作物へと還元されていく。そんな喜びが循環する農業のお話を聞かせていただいた。

プロフィール

Photo:牧 寛之

農家(曽我出荷組合 組合長)

松田 勝美

生まれも育ちもニセコ町曽我。祖父の代から続くニセコでの農業を継ぎ、ジャガイモやブロッコリー、にんじん、かぼちゃなどの農作物を栽培している。 ニセコ高校在学中に、農業を学ぶためアメリカのシアトルやサンディエゴでの研修プログラムに参加。ニセコの中でも特に質の良いじゃがいもを消費者に安心して提供できるように組織している「曽我出荷組合」の組合長として、市場との相互扶助的な関係づくりを大切にしている。消費者や社会のニーズなどを考慮した農産物の生産を心掛けている。

文責:牧 寛之

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