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INTERVIEWインタビュー

今と未来に目を向ける地域のしごと

2022.10.21

有限会社塚越産業 |

大槻 師寛

取材日:2022.10.06

Photo:佐々木 綾香

私たちが生活していくうえで必要不可欠な仕事である、廃棄物処理の仕事。ニセコ町の塚越産業に勤める大槻師寛(おおつき かずひろ)さんは、現場での仕事に携わりながら、会社の中心となって事業を切り盛りしています。廃棄物処理というと、現場でのゴミ収集作業のイメージが強いかもしれませんが、実は他にもさまざまな仕事があり、それぞれの仕事の楽しみ方ややりがいがあります。大槻さんの日々のお仕事の様子や、そこでどのような思いを持って働かれているのかなど、ぜひ思いを巡らせながら読んでみてください。

スポーツとともに過ごした青年時代

大槻さんは北海道白糠町のご出身。これまで「バリバリの体育会系のコミュニティの中で生きてきた」という大槻さんは、高校時代はバスケットボールに打ち込み、札幌の大学に進学後はアメフト部に所属しました。アメフト部に入ってからは、夜中までボール磨きをするような日々が続き、「自分が思い描いていたのはこんなキャンパスライフじゃない!」と思い立ち、入部して約1ヶ月後には退部したそうです(笑)

その後大槻さんは、夏休み期間の水泳教室の指導の仕事で、札幌にある大手スポーツクラブでアルバイトを始めます。小学校4年生から中学校2年生まで水泳を習っていたという大槻さん(そこもかなりの体育会系)、大学4年生の終わり頃にはスポーツクラブで水泳指導のスタッフに欠員が出たこともあり、そのまま正式に就職することを決めました。

体育会系の社会で生きてきたという大槻さんですが、なんと中学校・高校と生徒会長を務めていたのだそう!

「小さな頃から指導していた子どもが、大きくなって成長して、大会で優秀な成績を収めると嬉しかったですよね。その時の生徒が大人になって、時々会いに来てくれることもあるんです。」

子供の成長に直接関わり、その姿を見届けることができるのは、とても貴重な経験ですよね。ニセコ町で現在の仕事に就いた後も、水泳指導の機会を得て、地域の子供たちに定期的に教えているそうです。

ニセコ暮らしのはじまり

スポーツクラブでの仕事をしながら札幌で生活していた大槻さんは、大学時代に知り合ったニセコ町出身の奥様との結婚を機に、ニセコ町への移住を考えるようになります。ご結婚され、大槻家にお子さんが生まれた当時、務めていたスポーツクラブの運営会社がどんどんビジネスを拡大しており、転勤の可能性が増えてきました。

2~3年周期に一度転勤がある暮らしか、どこか一つのまちに本腰を入れて住む暮らしかー。そんなことを考えているさなか、奥様のご実家の会社である塚越産業の社長から「うちで働かないか?」と声をかけてもらいました。田舎で生まれ育ち、地方で暮らすことにも関心があった大槻さんは、ニセコ町への移住を決めました。

塚越産業の作業所にて、午前のゴミの分別作業の様子

塚越産業での仕事

アルバイト時代も含め、約10年働いたスポーツクラブを退職し、2008年の10月にニセコ町にやってきた大槻さん。会社に入社するやいなや、資格取得や勉強の日々が待っていました。

「廃棄物処理関係の仕事は、最初に色々と資格を取る必要があるんです。ゴミ処理の仕事だけじゃなくて浄化槽の維持管理などの仕事もあるので。そうやって資格を取っていくと、会社の制度上管理職の扱いになるので、まだ何も知らないのに入っていきなり管理職になっちゃって。周りの人たちは自分よりも上の年代の方がほとんどだったので、複雑な気持ちで日々仕事をしてましたね(笑)」

プレスされたアルミ缶のかたまりはなんだかアート作品のよう

塚越産業での仕事は、現場でのゴミ収集の仕事や分別作業の他に、浄化槽の維持管理の仕事や事業委託等に関する入札業務、会社の企画・運営に関わる業務など、多岐にわたります。またニセコでは、地域の個人のお客さんから海外資本の大きな会社まで、サービスを提供する相手先もさまざまです。変わり種(?)の仕事としては、羊蹄山の避難小屋の汚水処理システムの維持管理作業のために、夏の時期に仕事で羊蹄山に登ることもあるのだそう!塚越産業での意外な仕事の一面も分かりました。

塚越産業の会社からの羊蹄山の眺め。意外と知らなかった羊蹄山での汚水処理のお仕事!

幅広い内容の仕事に携わっている大槻さんですが、塚越産業で仕事をする中での面白さややりがいなどについて聞いてみました。

まずは目の前にいる人を大切に

「さまざまな相談や依頼でお客さんからよく電話をもらうのですが、『頼りにしてもらえてるな』と感じて嬉しいですね。お客さんに『ありがとう』って直接言ってもらえる職業って意外と少ないと思うんです。」

暮らしに直結する身近な困りごとを解決したり、一人ひとりのお客さんに寄り添う仕事だからこそ、「前向きで丁寧な仕事ができる人を育てていくことが大切」と、大槻さんは語ります。

「これから会社の事業を継続させていくうえで、経験豊富で色々なことができるような若い人にバトンタッチしていかないといけないと思っています。例えば、ごみ収集の仕事では、会社の規定としては大型自動車の免許があればできる仕事ではありますが、そこには仕事をするうえでの『センス』が必要です。それは、仕事に対する『前向きな気持ち』や『努力する姿勢』であって、例えば、ゴミ収集のルートを覚える、作業手順を覚えるといった基本的なところから、自ら進んで学ぼうとする姿勢が必要だと思ってます。」

流れが決まっている仕事であっても、ただ機械的に行えば良いということではなく、そこには、その仕事をより良いものにしていこうとする創意工夫をほどこすことが大切です。それによって、仕事の質や本人が感じられるやりがいなども変わってくるのかもしれません。

分別作業について作業現場で説明をする大槻さん

デジタル化で未来に向けた準備を

「浄化槽の排水処理の管理がうまくできた時も、達成感を感じますね。今会社の作業管理システムのデジタル化を進めているのですが、まずは作業の記録を写真や文章できちんと残すというところから始まり、最近はアプリを使って浄化槽の管理を行っています。浄化槽を設置している場所をピンポイントで把握することで、積雪時期に効率的に維持管理作業を行えるようになりますし、最新の管理・支払状況の情報を集約して関係者内で共有することで、作業のミスが減ったり、料金未納の件数も減りました。」

仕事の作業システムをデジタル化していくことが必要だと長年感じていた大槻さん。社長も大槻さんの思いに共感してくれていたようで、さまざまな提案をしながら、こうした取り組みを会社の中心となって進めてきました。

「この業界の仕事は、自分の『経験』と『感』でやるような人が今までは多かったんです。でもそれだと精度の高い仕事ができないし、後の世代にきちんと繋いでいけないですよね。作業を効率的に行うことで、人手が少なくても仕事が回せるようにもなる。それから、似たような技術や能力を持っているところ同士で、これから協力していく必要もあると思います。」

会社の未来をより良いものにしていくために、「人を育てること」と「デジタル化を進めること」の両面から、できることをひとつずつ実践しています。

これから社会に出る人たちへ

「今なかなか人が集まらなくて大変だったりするんですが、まずは職業案内所での募集の表記方法を再検討してみたり、これから就職する学生への発信としてSNSを始めてみたり、まずは仕事の内容を知ってもらえる機会を多くつくっていこうと思っています。まだ会社のホームページをきちんと整備できていない状況なので(笑)まずはそういうところから事業所としての認知を上げていこうと思っています」

色々とお話をうかがっていく中で、さまざまな内容の仕事やチャレンジの場があることを教えてもらいましたが、まだまだそうしたことを知らない若い世代の人たちが多くいます。まずは知ってもらうこと、そのためにさまざまな場所から情報にアクセスできるよう、地道な情報発信の活動を行っています。

積み上げられた廃プラスチックのかたまり

これから社会に出て働く若い人たちや、この仕事に興味を持った人たちに伝えたいことを聞いてみました。

「仕事をする中で、何か分からないことがあれば気軽に聞いてほしいし、失敗してもいいから主体的に動いて挑戦してほしいなと思います。機械をぶつけた、壊したとか、それでもいいから(笑)一生懸命挑戦してみてほしい(人に被害があってはいけないけどね)。あとは、人に喜ばれると思うことを自ら考えて進めてもらえたらと思います。実は現場の仕事って接客の仕事でもあるので、ホスピタリティのような感性も大切になってきます。接客の仕事や経営の仕事など、この会社の中ではきっと色んな仕事ができると思いますよ!」

地域の人たちの実際の暮らしに寄り添う仕事もあれば、会社の今後の方向性や運営システムを作っていくような仕事も経験できる。私たちが想像しているような現場作業での仕事だけに留まらず、さまざまなことに挑戦する機会があるように感じられました。

これからの若い世代の人たちへの思いや、会社の未来に向けた取り組みを語ってくれました!

最後に(取材後記)

塚越産業での仕事を通じて、身近な地域の方々と接しながら、会社の未来を見据える大槻さん。日々の仕事を丁寧に行いながら、将来に向けたさまざまな準備も一歩ずつ前進させています。廃棄物処理という仕事のお話を通じて、私たちがまだ知らないこの業界の仕事の面白さや可能性、やりがいについて理解を深めるとともに、大槻さんが日頃から大切にしている思いや考えをうかがうことができました。この記事を通じて、自分の知らなかった世界を知ったり、そこから興味を持ったり関心を深めてもらうきっかけになれば嬉しいです。

プロフィール

Photo:佐々木 綾香

有限会社塚越産業

大槻 師寛

北海道白糠町出身。釧路の高校を卒業後、大学進学で札幌に移住。札幌で水泳指導の仕事に長年携わった後、結婚を機に2008年10月にニセコ町に移住。同年月に(有)塚越産業に入社。地域の人たちに寄り添えるような人材の育成や、効率的な作業システムを構築するためのデジタル化に注力しながら、会社の中心となって経営に携わる。同社での仕事のかたわら、地域の子供たちへの水泳指導にも尽力。

文責:佐々木 綾香

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※掲載の完成予想図は、図面を基に描き起こしたもので建物の形状・仕様・色調・外構・植栽等は行政官庁の指導、施工上の都合及び改良のため、一部変更が生じる場合があります。
※植栽は特定の季節の状況を表現したものではなく、竣工時には完成予想図程度には成長しておりません。
※本計画は構想段階のため、今後デザイン含め変更する可能性があります。 Copyright © 2024 NisekoMachi Co,Ltd.