INTERVIEWインタビュー
みんなで創るニセコグローブ
2022.11.17ニセコ町地域おこし協力隊/ニセコグローブ製作所 代表 |
鎌田 諭
取材日:2022.10.26
Photo:佐々木 綾香
ニセコといえば、やっぱりスキーやスノーボードなどのウィンタースポーツ!そうしたスポーツを楽しむうえで重要なアイテムとなるのが、寒さから手を守ってくれるスノーグローブ。ニセコ町地域おこし協力隊として活動する鎌田諭(かまた さとし)さんは、今年8月に「ニセコグローブ製作所」というグローブメーカーをニセコ町内で立ち上げました。ウィンタースポーツの愛好家たちが集まるこの地で、みんなでグローブを創り上げていきたいという鎌田さん。鎌田さんのこれまでのことや、ニセコ町に移住したきっかけ、ニセコグローブ製作所の設立経緯やその思いなどをうかがいました。
スキーと共に過ごした学生時代、ニセコとの出逢い
鎌田さんは秋田県秋田市の出身。小さい頃からスキーに親しんでいたとのことで、3〜4歳の頃からお父さんに連れられ、自宅からほど近い山の斜面でスキーをしていたのだそう。小学校1年生の時に近場にスキー場ができたことで、小学生時代の冬の週末はスキー場で滑る日々を過ごしました。
中学・高校ではテニス部に所属し、しばらくスキーからは離れた生活を送っていましたが、北海道の大学に進学した際に「基礎スキー部」から勧誘を受け、入部します。
「その時の売り文句がすごく印象的で、『北海道ではテニスは6ヶ月しかできないけど、スキーは6ヶ月「も」できるよ!』と言われたんです(笑)せっかく北海道に来たし、子どもの頃にずっとスキーをやっていたことも思い出して、最終的に基礎スキー部に入ることにしました。」
穏やかな雰囲気の中にユーモアも溢れる鎌田さん
「基礎スキー」とは、スキーの技術を競って得点化し順位を決めるというもの。年に2回開かれる部の合宿先がニセコで、鎌田さんはその時初めてニセコのことを知りました。ちょうど海外からニセコにお客さんが訪れ始めた頃で、まだヒラフ坂に古いペンションがあった時代でした。
都会暮らしの中で芽生えた、地方での暮らしと起業への思い
元々ものづくりに興味を持っていたという鎌田さん。大学卒業後は大手化学メーカーに就職し、東京の本社で12年ほど勤めました。その当時も充実した日々を送っていたそうですが、自分の心の中に強く残る山や自然に近い生活をしたいという気持ちと、30代になってから芽生えてきた、自分で事業を起こしたいという気持ちが高まり、地方への移住、そしてそこでの起業を考えるようになります。
ニセコで山登りを楽しむ鎌田さん
地方で自分の会社を持つという目標は定まったものの、何をしたいのか分からない日々が続き、まずは時間を作って北海道をぐるぐる周ってみることにしました。さまざまな町を渡り歩く中で、大学時代に来ていたニセコにも訪れました。
「その時に、当時のニセコ町地域おこし協力隊の人が作ったPRチラシを見て、ニセコ町で協力隊の募集をしていることを知りました。」
ニセコを訪れたことがきっかけとなり、羊蹄山麓のまちでの暮らしに興味を持った鎌田さん。グローブ製作のアイディアも、ちょうど固まってきているところでした。
地域おこし協力隊としてニセコ町に移住
最終的に、なぜニセコ町の地域おこし協力隊に応募したのか、聞いてみました。
「まずは自分がスキーを滑りたいという気持ちが第一にありました。それと、スキーに関連するビジネスをやるので、スキーやスノーボード愛に溢れる人たちがたくさんいるニセコでものづくりをしたいという思いがありましたね。色んな人からアイディアをもらいながら、自分自身が興味を持っていたものづくりをやってみたいと思ったんです。」
ニセコ町地域おこし協力隊の詳しい募集内容を見た時に「これだ!と思った」という鎌田さん。いきなり一人きりで地方生活を始めるよりも、協力隊の活動を通じて地域の人との繋がりを作れたほうが、自分の事業に色んな人に関わってもらえるんじゃないかと思ったそう。地域おこし協力隊の制度は、そんな鎌田さんにとって打ってつけのものでした。
小学生向けのスキーレッスンで指導をする鎌田さん
晴れて2020年の10月にニセコ町地域おこし協力隊に着任した鎌田さん。普段はニセコ町立総合体育館に勤めながら、地域の子供たちが参加するさまざまなアクティビティのサポートを行っています。冬は、小学生のスキー授業や体育館主催のスキーレッスンでの指導を行っており、スキー経験豊富な鎌田さんが大活躍できる仕事に日頃から携わっています。夏は町の教育委員会主催の小学校高学年向けの野外活動イベントのサポートもあり、とても楽しく充実した日々を過ごしているのだそう。
そんな日々の仕事の中で、グローブ製作の事業を着々と形にしてきた鎌田さん。鎌田さんが立ち上げたグローブメーカーについて、詳しくお話を聞いてみました。
Made in Niseko のグローブメーカー
こちらが鎌田さんが製作されたグローブ
「ニセコグローブ製作所」は今年2022年8月に設立されました。そもそも、ウィンタースポーツの道具が色々とある中で、なぜグローブを選んだのでしょうか?さらに深堀りしてお話を聞いていきます。
「まず最初に、自分の興味のあることで何かできないかという気持ちから始まって、スキーに関わることで、ずっと興味を持っていたものづくりをやってみたいと思ってました。スキーのギア(道具)って色々あるけど、自分自身で小さく始められるようなものを考えた時に、『グローブだ!』って思ったんですよね。」
しっかり計画を立てて着々と形にしていく鎌田さん。すごいです!
「グローブだったら、北海道らしい地元の材料としてエゾシカの革も使えそうだなと思って。それから、日本のグローブの産地は香川県なのですが、スノーグローブを作るのであれば、実際にそれを使う機会の多い雪のある地域でやった方がいいんじゃないかとも思ったんです。」
自分自身の興味や、自分にできること、その広がりの可能性など、さまざまな要素が重なり、グローブを作ることを決めました。
グローブに使用するエゾシカの革を広げて見せてくれました。
自分一人でできる範囲でグローブを作っていきたいとのことで、受注生産のような形で生産していくそう。今シーズン製作するグローブの形はミトン型と、3本指型の2種類。インナーグローブはミトン型と5本指型の2種類で、こちらも自分で作ります。カラーバリエーションは、ホワイト、ヌメ、ブラック、グリーン、レッド、ネイビー、ブラウンの7色を展開する予定となっています。
今年の冬は、まずは試作販売ということで、100組の数量限定で生産・販売するとのこと!(1人につき2セット。一度試作したものを実際に使用してもらい、フィードバックを踏まえて改良したグローブを再度製作するという流れ)ご興味がある方はぜひ問い合わせてみてくださいね!(注:11月17日現在、製作予定数に達したため一旦ご依頼受付を停止中。受付再開の時期はSNS等で随時発信します、とのことです)
さまざまな色の革があって選ぶのに迷います、、、!
みんなで創り上げていくグローブ
最後に、事業を進めていくにあたって、鎌田さんが大切にしたい「色々な人に関わってもらう」ということについて詳しく聞きました。
「グローブは、それぞれの人で使うスタイルが違いますが、みんなが使うアイテムです。自分のアイディアだけでは限界があるので、色んなスタイルの人に試してもらって、グローブ製作のさまざまなアイディアをもらえたらと思ってます。ゲレンデで滑る人、競技思考の人、バックカントリーの人、スキー場の現場で仕事をする人など、グローブを使う人は多岐にわたります。過酷な環境下で使う人は、壊れにくい分厚い革が良いとか、ゲレンデを滑る人だったら、しなやかで使いやすい薄い革が良いとか、色んな要望があると思います。」
雪かきでガンガン使ってみたい!という人もいるそうで、実際にこの冬試してもらう予定なのだとか。
実際にミシンを扱っている様子も見せていただきました!
「元々スキー場などで滑る際に使ってもらうのがアイディアのスタートだったんですが、それだけでなく仕事や生活など色々な場面で使って試してもらいたいですね。様々な使い方に合わせて製作していく中で、『え!そんな使い方もするの?』みたいな驚きや発見があったりして、作っていて面白そうだなと。」
グローブそのものへのアイディアを集めるだけでなく、事業を進めていく中でも色々な人に関わってもらえたら、と鎌田さん。
「ニセコグローブ製作所の文字は、配属先の体育館の先輩で書を嗜んでいる方がいて、その方に作ってもらいました。協力隊の先輩にはウェブサイトを作ってもらっていたり、鹿皮を扱う業者さんを紹介してもらったりと、地元の人に色々手伝ってもらっています。スキーやスノーボード以外にも、ニセコには色々な知識や能力を持っている人が多いので、グローブ製作以外の部分でも色んな人と関わってやっていきたいなと思っています。」
名刺に記載された「ニセコグローブ製作所」の文字。日本のグローブメーカーは少ないので純日本の雰囲気を出したかったとのこと。
最後に
テレマークスキーを楽しむ鎌田さん
これから、「山を愛するすべての人と関わっていきたい」という鎌田さん。このグローブ製作事業を少しずつ大きくしていきながら、地域内・外にかかわらず、雪を愛する人たちとたくさん繋がっていきたいそうです。
「まだ一人で始めたばっかりなので、近隣地域の方で関わってみたいなと思ってくれている人がいたら、サポートしてもらえたら嬉しいですね。ニセコグローブの未来を色んな人たちと一緒に作っていきたいので、ぜひ茶々を入れていただければ(笑)」
雪や山を愛する人たち、そして地域の人たちのアイディアと協力によって作り上げられていくスノーグローブ。自分もグローブづくりに関わることができたら、きっとそのグローブへの思い入れも強くなるはず。色々な人の思いによって創り上げられるニセコグローブは、きっと地域に愛される素敵なものになっていくことでしょう。鎌田さんの今後のご活躍が楽しみですね!
筆者もグローブを注文しました ♪ 完成が待ち遠しい!
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プロフィール
Photo:佐々木 綾香
ニセコ町地域おこし協力隊/ニセコグローブ製作所 代表
鎌田 諭
秋田県秋田市出身。高校までを秋田県内で過ごし、大学進学を機に北海道札幌市に転居。大学在学中は基礎スキー部に所属し、部の合宿を通じてニセコの存在を知る。大学卒業後、東京の大手化学メーカーで12年ほど勤めたのち、2020年10月にニセコ町地域おこし協力隊に着任。配属先の活動では、地域の子供向けにスキー指導や野外アクティビティのサポート等を行っている。2022年8月に「ニセコグローブ製作所」を設立し、メイドインニセコのスノーグローブを目指し製作を行っている。
文責:佐々木 綾香